ファイナンス(1)
ファイナンスとは
資金の調達と運用を分析する学問です。
関連する分野としては以下のようなものがあります。
会社とは
(株式)会社
所有者とは独立した法人として扱われます。
多数の所有者(株主)が存在し、株式を所有している度合いに応じて支払配当を受け取ることができます。また、会社と所有者は別の法人格とみなされるため、二重課税となっています。したがって、実効税率は、所得×法人税率+(所得-所得×法人税率)×所得税/所得=法人税率+(1-法人税率)×所得税で求められます。
会社組織
取締役会
株主によって選任され、経営方針などを設定します。
最高経営責任者(CEO)
取締役会によって決められた規則や方針を実際に行い、会社を運営します。
財務活動
企業の財務活動としては、主に以下の三点が挙げられます。
- 投資意思決定:どこに投資するのかを決める。
- 資金調達意思決定:どこからお金を調達してくるのかを決める。
- キャッシュマネジメント:毎日の支払いで現金がなくなってしまわないよう管理する。
種々の問題
エージェンシー問題
経営者が株主の利益よりも自分の利益を優先してしまうこと。
これの解決策として、経営者報酬制度という株価の上昇に応じて経営者の報酬を決める、といった制度も考えられますが、リスキーな判断につながる可能性があるので、一概には良いとは言えません。地域奉仕やボランティアが、最終的には株主や経営者の利益につながるのかもしれませんね。急がば回れ。
CEOのパフォーマンス
CEOの実績が不十分であれば、株主はCEOを解雇できる制度はあります。
しかしながらCEOと取締役会が癒着していたり、CEOの評価は株価に現れることもあって、実際に解雇される例は少ないようです。
また、会社の株式の大部分を購入して、経営権を握ってやろうという敵対的買収も発奮済として効果を発揮します。
倒産
会社が倒産すればなにもかも失って夜逃げ、ホームレス生活、人生終了、と思うかもしれませんが、実はそうでもないようです。
会社の倒産は、「事業の失敗」ではなく、株主から債権者(銀行など)への「所有者の変更」と言えます。
株式市場
株式市場にもいくつか種類があります。
非上場会社
株主の数が少なく、定期的に取引されることはない。
上場会社
株式市場で自由に株式が売買されているため、流動性が高い。
上場・非上場の他にも、市場の種類として以下のようなものがあります。
発行市場
会社が新規株式を発行する市場。
流通市場
株式を投資家間で取引する市場。
世界の大きな株式市場としては、ニューヨーク証券取引所やナスダックといったものがあります。
ここでは、値付け業者が買い呼び値と売り呼び値を設定し、その差額をビッドアスクスプレッドとして儲けています。
- 例えば、値付け業者が110ドルで売ってもいいよ、という売り呼び値に対し、投資家が110ドルで購入。また別の機会に、値付け業者が90ドルで買ってもいいよ、という買い呼び値を出し、投資家が90ドルで売る。この差額20ドルがビッドアスクスプレッドになるわけです。
財務諸表の分析
財務諸表には、主に貸借対照表と損益計算書の二種類があります。一つずつ順番に見ていきましょう。
貸借対照表(BS)
ストック(ある時点)における企業の財務状態
資産(借方):流動資産(現金・売掛金・棚卸資産)と固定資産(土地や建物・機械や運搬具・減価償却費・ブランドや顧客関係といったのれんなど)企業がどのように資金を投資したかを示しています。
負債(貸方):流動負債(買掛金・支払手形など1年以内のもの)と固定負債(長期借入金・オフィス契約などのリース債務・繰延税金負債)といった、企業がどのように資金を調達したのかを示します。
純資産:資産と負債の差額です。この純資産は、株主資本の真の価値を正確には表してはいません。なぜなら、資本の取得原価で記載されているのと、数字ではかることの出来ない部分が大きいからです。
貸借対照表恒等式:資産=負債+純資産となる恒等式のことです。
貸借対照表分析
時価総額は、一株当たりの株価×株数
この値が低いとバリュー株と呼ばれ、たくさん資本を持っているのに株価がそれほど高くない割安株となります。逆にこの値が高いとグロース株と呼ばれ、資本はそれほどないが株価は高く成長株であると言えます。
資金調達において、企業がどれだけ負債に依存しているかを示します。(レバレッジ)
有利子負債には、買掛金や支払手形といった利子が発生しないものは含みません。
企業の営業価値=(株式)時価総額+負債-現金
なぜ負債も一緒についてくるのか、と疑問に思うときは、これが企業を買収するために必要な費用だと考えるとわかりやすいでしょう。
損益計算書(PL)
フロー(一定期間)における企業の財務状態
総利益(粗利益):製品販売収入-製造費などの直接費用
営業利益:総利益-営業費用(製造と直接関係はないが、売るのにかかった費用など)
利子税引前利益(EBIT):営業外(企業の投資活動など)の損益を追加した利益。
税引前利益:負債の利息支払いを差し引いた利益。
純利益:税金を差し引いた利益。
損益計算書分析
粗利益率=総利益(粗利益)/売上
売り上げに占める粗利益の割合を計上します。
営業利益率=営業利益/売上
営業による利子税金支払い前の利益が、売り上げのどれだけを占めているのか、ということを求めます。
純利益率=純利益/売上
株主に帰属する(利子税金支払い後の)利益の割合を考えます。
顧客への売掛金を回収するのに、何日かかるのかということを示しています。ここが膨らんでしまうと、売掛金を回収する前に現金がなくなって倒産してしまいます。
株主側から見た、投資額と回収利益の割合です。
会社が株主資本を上手く使い、効率の良い経営ができているか、ということをここから知ることができます。
企業側から見た、経営の効率を示しています。
デュポン公式
=純利益/売上高×売上高/総資産×総資産/株主資本
=収益性(売り上げに占める純利益の割合)×効率性(少ない資産で多くの売り上げが出れば効率が良い)×レバレッジ(企業資産と株主資本の割合)
株価収益率=(株式)時価総額/純利益=株価/一株あたり利益
株価が一株当たりの利益の何倍か、ということです。当然ですが、低いほうが割安株です。
キャッシュフロー計算書
損益計算書の純利益と、実際に手元にある現金は一致しないことがあります。これは、減価償却など実際に現金が動くわけではない支出や、記載されない支出が、損益計算書にはあるためです。
そこで、ある期間に企業が生み出した現金と、その使用配分額を知るためにキャッシュフロー計算書を作成します。
営業活動区分:営業活動に関連したもの。
投資活動区分:投資に用いられたもの。
- 新しい建物や機械装置といった、資本支出は減価償却せず一括で差し引く。
財務活動区分:企業と投資家との間の現金に関するもの。
- 株主に支払う配当を現金の流出とする。これを留保利益という。
- 株式発行による収入や自己株式取得による支出を考慮する。
- 負債の増加(現金調達)や返済(現金支出)を計算する。