国際金融論(1)
第一回
国民経済計算と国際収支会計
総生産
一つの国で生産活動の成果がどれだけ生み出されたか。(ただし単位や価値が違うことで単純に足し合わせることはできないため、下で再定義する)
財が一種類と仮定して、ある国の中である一定期間内に、市場で取引するために新たに生産された財・サービスの市場価値の合計。市場で取引されるために生産された財・サービスだけをカウントするため、家事は含まれない。ただし自分で自分に取引する持ち家の帰属家賃は含まれる。
名目総生産
貨幣の単位で評価された総生産のこと。生産量の変化だけでなく、物価など価格の変化も反映してしまう尺度である。
実質総生産
財の単位で評価された総生産のこと。つまり、価格は基準年のものが使われる。
中間生産物:最終段階に行き着く前の工程で生産された財・サービスのこと。
最終生産物:最終的に家計や企業が購入して利用する財・サービス。
付加価値:ある生産工程で新たに付け加えられた価値。ある一定期間内の合計が総生産と等しくなる。
産業関連表:経済の中間財と最終財の取引をすべて包括的に記録した表のこと。レオンチェフによる。
三面等価の原則
生産=所得(総所得とはある国の中で、ある一定期間内に生産 された財・サービスの対価として得られた所得の合計)=支出(総支出とはある国の中で、ある一定期間内に生産 された財・サービスに対して行われた支出の合計)となる法則のこと。
GNP(国民総生産)
日本企業が海外で上げる収益や、日本国民が海外投資から得た利子・ 配当払いなどをGDPに加え、逆に外国の企業 や国民が日本での生産活動や投資から得た収益を差し引くことで算出される。
国内総支出
国内総支出=消費+投資+政府購入+純輸出 (𝐺𝑁𝐸 = 𝐶 + 𝐼 + 𝐺 + 𝑁𝑋)
一つ一つについてみていく。
消費は、家計による財・サービスの購入のことであり、以下の4点。
- 非耐久財消費
- 半耐久財消費
- 耐久財消費
- サービス消費
投資は現在だけでなく将来も引き続き使用するために手に入れる財の購入のこと。民間によるもののみ。以下の3種類。
- 設備投資:企業による生産設備の購入(固定投資)
- 住宅投資:家計による住宅の購入(固定投資)
- 民間在庫投資:企業の持っている在庫ストックの増減
政府購入は中央政府や地方自治体による財・サービスの購入である。以下の3種。移転支出(年金、健康保険、失業保険、生活保護などの支払い)は含まれていない。
- 政府消費(GC):政府による消費的支出
- 公的投資(GI):政府による投資的支出
- 公的在庫投資(GS):政府による在庫品増減
純輸出は輸出から輸入を差し引いたものである。なぜ輸入をマイナスするのかというと、国内総支出の式においてC,I,Gは外国から輸入したものを含んでいるため、国内で消費する財のみを見たいとき、輸入材をまとめて引くのである。
国内総所得
国内総所得=労働所得+資本所得
労働所得には労働者の賃金、資本所得には地主の地代や資本家の貸借料、企業家の企業利潤(企業の手元に残る収益)が含まれる。
国際収支会計
海外との貿易取引や資本の貸借状況を集計し、体系的に記録する会計である。
国際収支 = 経常収支 + 資本移転等収支 – 金融収支 +誤差脱漏 = 0
経常収支の定義
経常収支=貿易・サービス収支 + 第一次所得収支 + 第二次所得収支
- 貿易・サービス収支:輸出入 + サービス取引の受け払い (𝑋 − 𝐼𝑀)
- 第一次所得収支(旧所得収支):国内居住者による対外金融債務・債券 の利子や配当金の受け払い
- 第二次所得収支(旧経常移転収支):外国への贈与・寄付、または国際 機関への分担金等
金融収支の定義
金融収支 = (直接投資 + 証券投資 + 金融派生商品 + その他投資) + 外貨準備
- 直接投資:ある国の居住者による海外の生産設備への投資や不 動産の売買
- 証券投資:ある国の居住者による海外の証券・債券への投資
- 金融派生商品:複数の証券や債券を組み合わせる、売買権に 様々な条件を付すなどした複雑でリスクの高い金融商品である。
- その他投資:国内金融機関による海外企業等への貸付や国内居 住者による海外金融機関への預金である。
- 外貨準備:通貨当局が備蓄する外貨建て資産
資本移転等収支:対価の受領を伴わない固定資産の提供、 債務免除のほか、非生産・非金融資産の取得処分等の収支 状況を示す。