経営工学徒の備忘録

~日々の大学生活や留学について~

ファイナンス(7)(後半)

資本コストの推定

株式の資本コストに関するCAPM公式

𝑟𝑖 = 𝑟𝑓 + 𝛽𝑖 × (E 𝑅𝑀 − 𝑟𝑓)  ※下線部は株式 𝑖 のリスクプレミアム

  • 株式 𝑖 の資本コスト:𝑟𝑖
  • ベータ値:𝛽𝑖
  • 市場の収益率:𝑅𝑀
  • 無リスク利子率:𝑟𝑓

株式の資本コストの計算に必要な処理は、

市場ポートフォリオの構築期待超過収益率の推定当該株式のベータ値(市場に対する感度)の推定である。

市場ポートフォリオの構築

市場インデックス:市場全体の動向の代理変数となる指標

S&P500時価総額の大きい米国企業500社

ウィルシャー5000:米国の主要なすべての上場企業

ダウ工業株:30社の大型工業株

これらは、投資信託を利用して容易に投資可能である。

市場のリスクプレミアムの推定

無リスク利子率の決定国債利回り、最高の信用度をもつ社債利回りなどから推定される。

推定法1過去のリスクプレミアム(過去の平均超過収益率)を利用。指定誤差が大きいという問題点もある。

推定法2ファンダメンタル(経済の基礎的条件)法を利用。一定配当成長モデルP0=Div/rE-gを利用する。rM=Div / P0 + g = 配当利回り期待配当の成長率 である。

ベータの推定

ベータ:証券の収益率の市場収益率に対する感度のことで、超過収益率の散布図にもっともよく当てはまる直線の傾きのこと。

線形回帰:( 𝑅𝑖 − 𝑟𝑓) = 𝛼𝑖 + 𝛽𝑖 (𝑅𝑀 − 𝑟𝑓) + 𝜀𝑖

Ri-rf:目的変数で株価iの超過収益率のこと。

RM-rf:説明変数で市場の超過収益率のこと。

両辺の期待値をとることで、残差は0になるため、

E [𝑅𝑖] = 𝑟𝑓 + 𝛽𝑖( E [𝑅𝑀] − 𝑟𝑓 ) + 𝛼𝑖

が導かれる。

株式のアルファ値(αi):平均収益率の証券市場線からの垂直距離のことで、CAPM理論によればにはならない。

負債と資本コスト

負債の資本コスト:債権者が企業に要求する期待収益率のこと。

期待収益率: 𝑟𝐷 = (1 − 𝑝) 𝑦 + 𝑝( 𝑦 − 𝐿) = 𝑦 − 𝑝𝐿最終利回り債務不履行の確率 × 期待損失率

負債のベータ:銀行ローンや多くの社債はほとんど売買されないので、負債のベータを推定するには特別な方法が必要である。

プロジェクトと資本コスト

プロジェクトの資本コストとは、類似企業資産資本コストであり、類似企業株式と負債資本コスト加重平均である。

負債無し資本コスト:𝑟𝑈 =𝐸 / (𝐸 + 𝐷) × 𝑟𝐸 +𝐷 / (𝐸 + 𝐷) × 𝑟𝐷

負債無しベータ:β𝑈 =𝐸 / (𝐸 + 𝐷) × β𝐸 +𝐷 / (𝐸 + 𝐷) × β𝐷

法人税の規定「(所得-負債の支払い利息)×法人税」によると、負債には節税効果がある。

𝑟:負債の利子率  𝜏𝐶:法人税率 として、

税引後利子率=r(1-𝜏𝐶)

加重平均資本コスト(WACC):𝑟𝑊 =𝐸 / (𝐸 + 𝐷) × 𝑟𝐸 +𝐷 / (𝐸 + 𝐷) × 𝑟𝐷×(1 − 𝜏𝐶)

負債と株式の資金調達割合を見ている。